完全なよろこび

目が悪くなったフランシスコは、弟子と歩いている道中、次のことをノートに書き留めておいてほしいと頼みます。

「小さな兄弟たちは(フランシスコ修道会のこと)、どこの国ででもきよらかさとりっぱな生き方とで、みなのすぐれた模範となっているが、そこには完全な喜びはないと、書き留めておいてくれぬか。」

「・・・盲人の目を開け、曲がった身体を立たせ、悪霊を追い払い、聾者の耳をひらき、足なえを歩かせ、口のきけぬ人に声を与え、さらにもっと大きい奇跡を行って、四日目に死人をよみがえらせるとしても、そこにもまた完全なよろこびはない」

「・・・あらゆる国の言葉、あらゆる知識、聖書のすべてを知り尽くしていて、未来の事柄ばかりか、心の秘密や魂の内側までも言い当て、あらわし出すことができるとしても、そこにも完全なよろこびはない。」

「・・・み使いたちの言葉を語り、星の運行や薬草の効能に通じ、地上の他からのすべてをくみつくし、鳥、魚、すべての動物、人間、草木、岩石、根、水などに何ができるかを知り尽くしているとしても、そこにも完全なよろこびはない」

「・・・とても上手に説教をして、すべての人々を回心させキリストへの信仰にみちびくことができるとしても、そこにも完全なよろこびはない」

・・・こうしたやりとりが二マイルもの道中の間、ずっと続いたものだから、弟子は非常に驚いてフランシスコに尋ねます。「では、完全なよろこびはどこにあるのかお教えください」

フランシスコは答えるのです。

「こうして雨に濡れ、寒さにこごえ、空腹に苦しみながらやがてサンタ・マリアに到着する、そこで修道院の門をたたく。すると門番の男が怒って出てきて「おまえたちは世間の人々をだまし、貧しい人たちの寄進の品々を盗んでまわっているならず者たちにきまっている。とっとと失せろ」という。わたしたちは雨交じりの雪の中を、寒さにこごえ、空腹をかかえながら、夜までずっと外に立たされたままでいる。それでもわたしたちがじっと耐え、取り乱さず、つぶやかず、どんなに悪口を言われ、手荒に取り扱われ、手ひどく拒絶されようと、辛抱しつづけ、かえって、心にへりくだり、愛をもって、この門番こそ自分たちの本性をほんとうに知ってくれている者なのだ、この門番がわたしたちをののしるのは、神様ご自身のお計らいによるのだと考えられるのなら、おお、そこにこそ完全なよろこびがあるのだ、と記しておいておくれ。・・・なおも戸を開けてくださいと願い、門番がいよいよ怒り狂って、わたしたちのマントをひっつかみ、地面へ引き倒し、雪の中に転がし、そのごつごつした棒で、さんざ打ちのめすとする。こういうことをすべて、わたしたちが、がまん強く、よろこんで耐え抜くとしたら、ほむべき主キリストの苦しみを思い、ご自身への愛のゆえに耐えねばならぬと思い続けるなら、おお、そこにこそ完全なよろこびがある、と書くがいい。」
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by yakubutsu | 2006-02-03 01:04  

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